Starship が初めて軌道に到達、Starlink V3 衛星26基を投入(飛行14)
2026年9月28日、Starship の飛行14で宇宙船が初めて軌道に到達し、次世代の Starlink V3 衛星26基を投入しました。エンジンの一部停止を受け、軌道滞在は予防的に短縮されました。
公開日 更新
イメージHall 00 · Space Basics
Orbit
軌道とは、地球に向かって落ち続けているのに、横向きにとても速く進んでいるせいで、いつまでも地面にぶつからない状態のことです。
宇宙に行くことと、軌道に乗ることは違います。高さではなく「横向きの速さ」がカギになる理由と、Starship が14回目の飛行でようやく軌道に到達した意味を、基礎から解説します。
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How it works
「宇宙に行く」と「軌道に乗る」は、同じではありません。宇宙の入り口としてよく使われるのは高度100km(カーマン・ライン)で、NASA によると、地球の大気の99.99997%はそれより下にあります。100kmは東京から富士山までの直線距離とほぼ同じで、真上に向かうだけなら、ロケットにとってそれほど遠くありません。国際宇宙ステーション(ISS)が回っているのも、平均で高度約400km(約250マイル)です。
難しいのは高さではなく、横向きの速さです。ボールを水平に投げると、やがて地面に落ちます。もっと速く投げれば、もっと遠くに落ちます。ところが地球は丸いので、十分に速く投げると、ボールが落ちていくのと同じだけ地面のほうも丸く遠ざかっていきます。こうなると、ボールは落ち続けているのに、いつまでも地面にたどり着きません。これが軌道です。上の図は、この様子を描いたものです(高さは大きく誇張しています)。同じ点から横向きに飛び出しても、遅いと細かい点線のようにすぐ落ち、速いと白い破線のように遠くまで飛んでから落ち、十分に速いと青い円のように地球を回り続けます。
Figure
ゆっくり投げる
すぐに地面に落ちる。
速く投げる
遠くまで飛んでから落ちる。
とても速く投げる
落ちるのと同じだけ地面が丸く遠ざかり、落ち続けても地面に届かない。これが軌道。
NASA はこれを「物体は常に地球に向かって落ちているが、横向きに十分速く動いているので地面にぶつからない」と説明しています。横向きの速さが足りなければ落ちてしまい、逆に速すぎれば地球から離れていきます。地球の重力と、前へ進む勢いがつり合ったところに、軌道があります。
では、どれくらい速いのか。ISS は時速約2万8000km(時速1万7500マイル)、秒速にするとおよそ8kmで飛んでいます。旅客機のおよそ30倍の速さで、東京から大阪までの直線距離を1分足らずで通り過ぎる計算です。この速さで、ISS は約90分で地球を1周し、1日に16回、日の出と日の入りを迎えます。
Figure
この速さを出すために、ロケットはほとんどが燃料でできています。SpaceX の公表値では、Falcon 9 は打ち上げ時の重さが約549トンなのに対し、低い軌道へ運べる荷物は約22.8トン、全体の約4%にすぎません。残りの大部分は、横向きの速さを稼ぐために燃やしてしまう燃料と、それを入れておくタンクやエンジンです。
途中で空になったタンクを切り離して身軽になる「段分離」も、この速さを出すための工夫です。Starship の場合、下段の Super Heavy が打ち上げから約2分半までを担当し、そこから先の加速は上段の宇宙船が自分のエンジンで続けます。
Starship の飛行1〜13は、すべて軌道に届かない「弾道飛行」でした。宇宙空間までは上がりますが、横向きの速さをわずかに足りない状態にとどめ、何もしなくても決められた海域に落ちてくる経路です。2026年9月の飛行14でも、宇宙船はまず SpaceX が「受動的に安全」と呼ぶこの弾道飛行の経路に入りました。
そこで機体の状態を確認し、問題がないと判断してから、エンジン1基に再点火して最後のひと押し(軌道投入噴射)を行い、初めて軌道に乗りました。SpaceX の飛行タイムラインでは、この噴射は打ち上げ約25分後に始まり、約19秒で終わっています。弾道飛行と軌道を分けたのは、この短い加速でした。
Figure
0:00打ち上げ
約2分20秒段分離
約8分宇宙船のエンジン停止
まずは、何もしなければ決めた海域に落ちる弾道飛行の経路に入る。
約25分軌道投入噴射(約19秒)
エンジン1基に再点火し、横向きの速さを足して初めて軌道へ。
約34分〜1時間Starlink 衛星26基を放出
約8時間53分軌道離脱噴射
速度を落とし、地球に落ちる経路へ移る。
約9時間50分太平洋に着水
Why it matters
衛星が仕事をするには、軌道に乗っている必要があります。飛行13では Starlink V3 衛星20基を放出しましたが、弾道飛行の途中だったため、SpaceX によると衛星は放出から約20分後に大気圏に再突入して燃え尽きたとみられています。飛行14では26基を軌道に投入し、衛星はこのあと自分で軌道を上げてから、実際のサービスに使われます。同じ「衛星の放出」でも、軌道に乗っているかどうかで、意味がまったく違うのです。
軌道に乗ると、今度は自然には戻ってこられなくなります。軌道は「落ち続けても地面に届かない」状態なので、帰るにはエンジンを噴射して速度を落とし、自分から落ちる経路に移る必要があります(軌道離脱噴射)。宇宙空間でエンジンを確実に再点火できなければ、巨大な機体が狙っていない場所に落ちるおそれがあります。
SpaceX は2024年11月の飛行6で、宇宙空間でのエンジン再点火に成功し、これを「本格的な軌道飛行を始める前に必要な、軌道離脱噴射の能力の実証」と位置づけていました。飛行14では、打ち上げから約9時間後に初めての軌道離脱噴射を行い、太平洋の目標海域に着水しています。軌道に「行けること」と「帰ってこられること」が、セットで確かめられたことになります。
編集部の見方では、軌道への到達はゴールではなく、出発点です。より多くの衛星を運ぶことも、宇宙船の回収と再使用も、さらに遠くへ向かう計画も、まず軌道に安定して上がれることが前提になるからです。
Compared
弾道飛行と軌道飛行の違いは、横向きの速さが足りているかどうかです。弾道飛行では、宇宙空間に届いても、いずれ必ず地上(や海)に落ちてきます。軌道飛行では、エンジンを使って減速しない限り、地球を回り続けます。高度100kmを少し越えて数分で戻ってくるような宇宙飛行も、宇宙には行っていますが、軌道には乗っていません。
Figure
弾道飛行
軌道飛行
軌道に乗ること自体は、SpaceX にとって初めてではありません。Falcon 9 は毎回の打ち上げで衛星や宇宙船を軌道へ運んでいます。Starship の飛行14が大きな節目なのは、機体全体の再使用を目指す、過去に例のない大きさのロケットが、初めて同じことをやってのけた点にあります。
さらにその先には、地球の引力を振り切って月や惑星へ向かう飛行があります。これにはさらに大きな速さが必要で、いったん軌道に上がってから加速し直すのが一般的な考え方です。
FAQ
いいえ。高度400km付近でも地球の重力はしっかり働いています。ステーションも中の人も、地球に向かって一緒に落ち続けているため、お互いに対して浮いているように見えるのです。軌道にいるということは、ずっと落ち続けているということでもあります。
いいえ。飛行1〜13は、はじめから軌道に乗らない弾道飛行として計画されていました。何かあっても決められた海域に落ちてくるため、試験の安全を確保しやすいからです。SpaceX も2026年9月の発表で、最初の13回は意図して「受動的に安全な」弾道飛行にしていたと説明しています。各回の成否は、段分離や再突入など、その回の目標を達成できたかどうかで判断されています。
真上に向かうだけでは、どれだけ高く上がっても、エンジンを止めればまっすぐ落ちてきます。軌道に必要なのは横向きの速さです。そのためロケットは、打ち上げ直後は空気の濃い層を抜けるために上へ向かい、そのあと少しずつ機体を傾けて、ほとんど横向きに加速していきます。
上昇中に宇宙船のエンジン1基が予定より早く止まったため、SpaceX は念のため軌道にいる時間を短くし、早めに軌道離脱噴射を行うと判断しました。それでも衛星26基の投入は完了しています。
SpaceX · 公式 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
SpaceX · 公式 · 一次情報 · 2024.11.19 · 参照 2026.10.02
SpaceX · 公式 · 一次情報 · 2026.07.24 · 参照 2026.10.02
SpaceX · 公式 · 一次情報 · 2026.09.28 · 参照 2026.10.02
SpaceX · 公式 · 一次情報 · 2026.09.15 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
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