Falcon 9 ブースター B1067、最多となる37回目の飛行に成功
2026年8月25日の Starlink 10-49 ミッションで、Falcon 9 の1段目ブースター B1067 が37回目の飛行を行い、ブースター再使用の最多記録を更新しました。
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Hall 00 · Space Basics
Launch Cost
ロケットの打ち上げが長いあいだ高かったのは、燃料が高いからではなく、高価な機体を1回ごとに使い捨て、しかも少ない打ち上げ回数で大きな固定費を分け合っていたからです。
ロケットの打ち上げが長く高価だったのは、機体を1回ごとに捨て、少ない打ち上げ回数で大きな固定費を分け合っていたためです。再使用と打ち上げ回数の増加がそろったことで、1kgあたりの費用の考え方が変わりました。
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How it works
東京から大阪へ飛ぶたびに、旅客機を1機ずつ捨てていたらどうなるでしょうか。運賃には、機体を丸ごと1機作る費用が上乗せされてしまいます。長いあいだ、ロケットはまさにそういう乗り物でした。打ち上げに使った機体は海に落ちるか燃え尽きて、二度と使えません。たとえば NASA の監察総監室(OIG)は2021年の報告書で、月探査用の大型ロケット SLS について、宇宙船 Orion などを除く部品はすべて「使い捨て」だと指摘し、SLS 1機の製造に約22億ドルかかると見積もっています。
打ち上げの値段を比べるときによく使われるのが「1kgあたりの費用」です。NASA エイムズ研究センターの技術論文(2018年)によると、ふつうは1回の打ち上げ費用を、低い軌道(地球のすぐ近くを回る軌道)へ運べる最大の重さで割って求めます。同じ論文の表(2018年のドルに換算した値)では、1970〜2000年に初めて飛んだロケットの平均は1kgあたり約1万8500ドルでした。スペースシャトルは1回約17億ドルで2万7500kgを運べたので、1kgあたり約6万1700ドルになります。
これに対して、2018年当時 SpaceX が公表していた Falcon 9 の価格は6200万ドルで、運べる重さは2万2800kg。1kgあたり約2720ドルです。Falcon Heavy は9000万ドルで6万3800kgを運べるため、約1410ドルになります。論文は、シャトルの費用が Falcon 9 の約20倍、Falcon Heavy の約40倍だったとしています。上の図は、この「1kgあたり」の費用を棒の長さで比べたもので、上からスペースシャトル、1970〜2000年に初めて飛んだロケットの平均、Falcon 9、Falcon Heavy の順です。
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ただし、この数字は「満載したときのカタログ値」だと考えてください。荷物が軽ければ、同じ打ち上げ費用を少ない重さで割ることになり、1kgあたりはそのぶん高くなります。SpaceX の S-1(上場の届出書)によると、Falcon 9 が使い捨てで低い軌道へ運べるのは約23トンですが、2023年以降の実際の打ち上げでは、1回あたり平均約13トンでした。さらに、機体を回収する場合は着陸用の推進剤を残しておく必要があるため、運べる重さが減ることも NASA の論文は指摘しています。
では、なぜ打ち上げはそれほど高かったのでしょうか。1つめの理由は、機体の作り方です。NASA の論文が引用する分析では、高い費用の原因として、ミサイルから受け継いだ「性能を最大に、重さを最小に」という設計の考え方、失敗が許されないための入念な設計と細かな監督、新しい技術の開発費、部品や接続部の多さが挙げられています。ロケットは、大量生産の工業製品というより、1機ずつ手間をかけて仕上げる特注品に近かったのです。
2つめの理由は、打ち上げ回数の少なさです。ロケットには、発射台や組み立て工場、それを動かす大勢の人など、打ち上げが年に1回でも10回でもかかり続ける「固定費」があります。体育館を1年借りたら、試合を1回しか開かなくても、10回開いても、払う金額は同じなのと似ています。NASA OIG によると、SLS の発射を支えるケネディ宇宙センターの地上設備には、年に約5億6800万ドルかかると見積もられていますが、打ち上げのペースは年1回程度の想定でした。スペースシャトルも、NASA によると1981年から2011年までの約30年で135回の飛行で、平均すると年4〜5回の計算です。NASA の論文が引用する1993年の分析は、シャトルの打ち上げ作業には契約企業の約1万人と公務員約1000人が必要で、少ない飛行回数が固定費の高さのせいで1回あたりの費用をゆがめていると述べています。
3つめの理由は、組織と契約のしかたです。NASA は2011年、Falcon 9 の開発費を NASA の費用モデルで見積もりました。従来の NASA の進め方なら約39.8億ドル(2010年度のドル)という結果で、SpaceX を訪問して入力を見直した後の試算でも、かかった費用を後から払う従来型の契約なら約13.8億ドル、金額を先に決める契約で約4.4億ドルと、大きな差が出ました。SpaceX はこの差の理由として、少ない人数、管理の層の少なさや設備の規模に加え、外部の会社に1ドル分の仕事を頼むと、その会社の経費や利益で実際には3〜5ドルかかることを挙げています。NASA の2018年の論文も、SpaceX の費用が低い大きな理由として、設計から製造、打ち上げまでをほぼ自社で行う「垂直統合」を挙げています。
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① 特注品だった
② 回数が少なかった
③ 組織と契約
ここで再使用が効いてきます。1段目を回収して何度も飛ばせば、高価な機体の製造費を1回で背負うのではなく、何回もの飛行で分け合えます。S-1 によると、SpaceX は会計上も、ロケットの機体を「見込まれる平均飛行回数」にわたって費用として割り振っています。報道によれば、ブースター B1067 は2026年8月に37回目の飛行を行いました。ただし、回収すれば必ず安くなるわけではありません。NASA の論文は、スペースシャトルが再使用型だったにもかかわらず、飛行の合間の整備に多額の費用がかかったことが高コストの大きな原因だったとしています。再使用が得になるのは、整備が安く、すぐにまた飛ばせるときだけです。
そして、打ち上げ回数そのものが増えました。S-1 によると、Falcon の打ち上げは2023年の96回から、2024年に134回、2025年に165回へ増えています。2025年の165回のうち、外部の顧客の打ち上げは43回で、残りの122回は Starlink 衛星などを運ぶ自社の打ち上げでした。SpaceX 自身が最大の顧客になることで、発射台や工場、人といった固定費をたくさんの打ち上げで分け合え、回収したブースターも次々に使い回せます。編集部の見方では、「再使用」と「打ち上げ回数の多さ」は片方だけでは効果が小さく、両方がそろって初めて1回あたりの費用を大きく下げる組み合わせだと考えられます。
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Why it matters
打ち上げ費は、宇宙に送るもの自体の作り方も左右します。NASA の論文は、打ち上げが高いと「1kgでも多くの性能を詰め込め」という強い圧力がかかり、衛星は軽く、繊細で、高価になりがちだったと指摘しています。打ち上げが安くなれば、少し重くても丈夫で、安く作れる設計を選べるようになります。
Starlink のように何千基もの衛星を打ち上げ続ける事業は、この費用構造の上に成り立っています。S-1 で SpaceX は、再使用によって新しい機体を毎回作る必要がなくなり、1kgあたりの費用が大きく下がること、打ち上げ間隔が短くなることが、衛星網をより速く、より安く広げる助けになっていると説明しています。
国の宇宙計画にとっても、打ち上げ費は大きな問題です。NASA OIG は、SLS と Orion の1回あたりの製造・運用費を約41億ドルと見積もり、この費用を把握して減らさなければ、今の形でアルテミス計画を続けるのは大きな課題になると指摘しました。
SpaceX はさらに先の目標も掲げています。S-1 によると、SpaceX は機体全体を再使用する Starship によって、いずれ軌道までの1kgあたりの費用を、NASA が示した過去の平均(約1万8500ドル)から99%以上下げられると考えています。これは会社の見通しであり、実際にどこまで下がるかは、Starship が実際に荷物を運び、何度も再使用されるようになってから確かめる必要があります。
Compared
「価格」と「コスト」は別のものです。価格は顧客が払う金額で、コストは SpaceX が実際に負担する費用です。SpaceX は1回あたりのコストを公表していません。S-1 には、2024年から2025年にかけて打ち上げ回数が増えた一方で、顧客向けの打ち上げの平均価格はほぼ横ばいだったとあります。コストが下がっても、その分がそのまま価格に反映されるとは限りません。
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価格
コスト
「開発費」と「1回あたりの打ち上げ費」も分けて考える必要があります。開発費は、新しいロケットを設計し、試験して完成させるまでに一度だけかかる費用です。NASA の2011年の見積もりは開発費の比較で、1kgあたりの費用の比較は1回ごとの打ち上げ費の話です。
使い捨てと再使用のどちらが安いかは、条件しだいです。再使用には、着陸用の推進剤のぶん運べる荷物が減る、回収や整備に費用がかかる、という代償があります。整備が安く、飛ぶ回数が多いときに、はじめて使い捨てより有利になります。
FAQ
重さの大部分が推進剤なのは確かです(くわしくは「ロケットはなぜ『ほぼ燃料』なのか」の記事で解説しています)。ただし費用の内訳は別の話です。NASA OIG が示した SLS の1回あたり費用の内訳は、ロケット本体の製造、宇宙船、地上設備が中心でした。燃料代が費用の何%を占めるかは、編集部では公的な資料でまだ確認できていないため、ここでは数字を挙げていません。
2リットルのペットボトル1本はおよそ2kgなので、1kgあたり1万8500ドルなら、それを運ぶだけで約3万7000ドルかかる計算です(2018年のドル換算の平均値をもとにした目安)。同じ計算を Falcon 9 の2018年当時の価格で行うと、約5400ドルになります。
S-1 によると、SpaceX はロケットの種類、軌道へ運ぶ重さ、荷物の大きさ、1社で貸し切る専用便か、複数の顧客で相乗りする「ライドシェア」か、といった条件で料金を決めています。最新の公表価格は SpaceX の公式サイトに載っていますが、編集部ではこの記事の時点で確認できていないため、確認でき次第追記します。この記事の数字は、NASA の論文が使った2018年時点の公表価格です。
S-1 で SpaceX は、Falcon の再使用ロケットは40回の打ち上げに向けて認証されていると説明しています。報道によれば、最も多く飛んだブースター B1067 は、2026年8月に37回目の飛行を行いました。記録は更新が続くため、最新の値は Database で確認できます。
U.S. Securities and Exchange Commission (EDGAR) · 政府・規制当局 · 一次情報 · 2026.05.20 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
NASA Office of Inspector General · 宇宙機関 · 一次情報 · 2021.11.15 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
NASA Technical Reports Server · 技術資料 · 一次情報 · 2018.07.08 · 参照 2026.10.02
Spaceflight Now · 報道 · 2026.08.24 · 参照 2026.09.30
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