Crew-13 が打ち上げ成功、4人を乗せた Dragon が ISS へ
NASA の Crew-13 が日本時間2026年10月2日0時10分、Falcon 9 で打ち上げられました。4人を乗せた Crew Dragon は軌道に到達し、約8時間後の国際宇宙ステーションへのドッキングを目指しています。
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イメージHall 00 · Space Basics
Launch Window
ロケットは、決まった時刻に、天気・機体・周りの安全という条件がすべてそろったときにしか出発できない乗り物なので、どれか一つでも外れると、その日はあきらめて次の機会を待ちます。
ISS など軌道上の相手に向かう打ち上げは、自転する地球の上の発射場が相手の軌道面の下にさしかかる短い時間にしか出発できません。その時刻に天気・機体・地上設備・空域の条件がすべてそろわなければ、スクラブ(その日の中止)や延期になります。
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How it works
打ち上げのニュースでは、「延期」「スクラブ」という言葉がよく出てきます。ロケットは、準備ができたらいつでも出発できる乗り物ではありません。たとえるなら、発車時刻がきっちり決まっている電車です。ホームに着くのが遅れたら、その電車には乗れず、次の便を待つしかありません。ロケットの場合、その「次の便」が翌日以降になることも珍しくありません。この、出発してよい時間の幅のことを「打ち上げの窓(launch window)」と呼びます。NASA は子ども向けの解説で、窓が壁にあいた開口部であるように、打ち上げの窓は「時間にあいた開口部」だと説明しています。
なぜ時刻が決まってしまうのでしょうか。軌道の記事で見たように、国際宇宙ステーション(ISS)は約90分で地球を1周しています。その通り道は、宇宙の中にほぼ固定された大きな輪のようなものです。一方、地球はその輪の内側で1日に1回、自転しています。発射場は地面と一緒に回っているので、輪の真下にさしかかる瞬間は、1日のうちごく限られています。その瞬間に出発すれば、ロケットは ISS と同じ面に乗ったまま上がっていけます。NASA も、軌道上の相手と合流する打ち上げは、相手の動きに合わせて時刻を決めなければならないと説明しています。上の図は、北極の上から地球を見たところです。地球が回るにつれて発射場(白い点)は点線の円の上を動き、宇宙に固定された軌道の面(青い線)とちょうど重なった瞬間だけ、その面に沿って打ち上げられます。
2026年10月1日の Crew-13 は、まさにこの例です。Falcon 9 は米東部時間午前11時10分(日本時間10月2日0時10分)に打ち上げられました。NASA によると、その瞬間 ISS は高度約263マイル(約423km)、キューバのハバナの北西の上空を時速2万8200kmで飛んでおり、打ち上げの約1分37秒後に、ケネディ宇宙センターの真上を通過しました。頭上を通り過ぎようとする ISS に合わせて出発したからこそ、打ち上げから約7時間50分という短い時間でのドッキングを計画できたのです。
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11:10Falcon 9 が打ち上げ
米東部時間。日本時間では10月2日0時10分。
約1分37秒後ISS がケネディ宇宙センターの真上を通過
打ち上げの瞬間、ISS はキューバのハバナの北西の上空にいた。
約7時間50分後ISS にドッキング(計画)
ISS へ向かう打ち上げでは、窓の幅がほぼゼロになることもあります。これを「瞬間的な窓(instantaneous launch window)」と呼びます。たとえば2021年12月の補給船ミッション CRS-24 について、NASA は「瞬間的な打ち上げの窓は午前5時7分に開く」と伝えていました。発車時刻ちょうどにしか出られない電車のようなもので、少しでも遅れればその日の機会はなくなります。そのためカウントダウンには、あらかじめ「ホールド(hold)」と呼ばれる一時停止が組み込まれています。NASA によると、ホールドは正確な打ち上げ時刻に合わせるためと、作業の余裕をつくるためのもので、ホールド中は「T マイナス」の時計が止まります。Crew-13 では、打ち上げ35分前に燃料と液体酸素の積み込みを始め、1分前に打ち上げ責任者が最終確認をしてエンジン点火の手順に入りました。
時刻が合っていても、天気が悪ければ出発できません。フロリダの打ち上げでは、米宇宙軍の第45気象隊が天気を予報します。NASA が公開している Falcon 9 と Crew Dragon の気象ルールには、たとえば次のようなものがあります。発射台の高さ162フィート(約49m)で、風速が時速30マイル(約48km)を超えて吹き続けていたら打ち上げない。発射台や飛行経路から10海里(約18.5km)以内で雷が観測されたら、30分間は打ち上げない。頂上が氷点下の高さまで伸びた積雲から10海里以内では打ち上げない。厚さ4,500フィート(約1,370m)を超え、氷点下の高さまで伸びた雲の層を突き抜けない。地上で測る空気中の電気の強さが基準を超えたら15分待つ、というルールもあります。雷に関わるものが多く、上空の強い風の変化(ウインドシア)も打ち上げを止める理由になります。
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見ているのは発射場の空だけではありません。Crew Dragon には、上昇中に異常があれば宇宙船だけを切り離して海に降りる仕組みがあります。そのため、上昇経路の下の海の天気も条件に入っています。NASA によると、北米の東海岸沿いから北大西洋にかけての50か所以上で、風・波・雷・雨を監視し、それぞれの地点で条件を外れる確率を計算します。2025年3月の Crew-10 では、発射場付近の予報が「好条件95%以上」だったのに、Dragon の飛行経路で強い風と雨が予想されたため、前日の夕方に翌日の打ち上げを見送りました。地上から見て晴れていることと、打ち上げてよいことは別なのです。
天気のほかに多いのが、機体や地上設備のトラブルです。同じ Crew-10 は、その前日の3月12日、発射台で Falcon 9 を支える地上設備の腕(クランプアーム)の油圧系に問題が見つかり、打ち上げを取りやめていました。乗員はいったん宇宙船を降りています。このように、その日の打ち上げの試みを途中で取りやめることを「スクラブ(scrub)」と呼びます。Crew-10 は、スクラブと天気による見送りを経て、2日後の3月14日午後7時3分(米東部時間)に打ち上げられました。次の機会として示された時刻が、13日は午後7時26分、14日は午後7時3分と日ごとに違っていたのも、相手の ISS に時刻を合わせているからです。
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3月12日スクラブ
発射台で機体を支える地上設備の油圧系に問題。乗員はいったん降りた。
3月13日打ち上げを見送り
発射場付近は好条件95%以上の予報でも、飛行経路の強い風と雨のため。
3月14日 19:03打ち上げ
米東部時間。
もっと前の段階で日程そのものが動くこともあります。Crew-13 は、打ち上げ前の通常の点検で Dragon の推進系に酸化剤の漏れが見つかり、NASA が2026年8月29日に打ち上げ日の見直しを発表しました。報道によれば、当初の予定は9月12日で、SpaceX は酸化剤のバルブを交換したとされています。新しい目標の10月1日、発射場付近の天気は「好条件40%」という予報で、主な心配は積雲、厚い雲の層、雨の中の飛行の3つでした。それでも、予定の時刻には条件が整い、打ち上げは実施されました。確率の数字は、その時刻に条件を満たせるかどうかの見込みであり、低いからといって必ず延期になるわけではありません。
最後に、発射場の場所の話です。地球は東向きに自転していて、NASA によると赤道では地面が時速1,675kmで動いています。発射台にいるロケットは、最初からこの速さを持っているのです。軌道に乗るには時速約2万8000kmが必要なので、東に向けて打ち上げれば、この分を「おまけ」としてもらえます。さらに NASA は、事故に備えて、飛んでいく先に人が多く住む場所がないことも発射場の条件に挙げています。フロリダ東海岸の発射場は、東に大西洋が広がっているため、この両方を満たします。日本の種子島宇宙センターも同じ考え方です。JAXA によると、北緯約30度の種子島では自転の速さが秒速約400m(時速約1,440km)あり、もし真西に打ち上げると、真東に打ち上げるときのほぼ半分の重さの衛星しか運べなくなります。JAXA は、打ち上げ方向に定期的な航空路や航路がないことも、射場を選ぶ条件に挙げています。
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Why it matters
打ち上げの周りの空と海は、一時的に立ち入り禁止になります。米国では連邦航空局(FAA)が、航空機・陸上・海上の人々を守る役割を担っています。FAA は打ち上げの前に「航空機危険区域」を設け、その場所・広さ・時間を、落下物が航空機に当たる確率が100万分の1を超えないように計算しています。航空機には「ノータム(航空情報)」で、船には米沿岸警備隊の「水路通報」で知らせます。打ち上げの時刻は、ロケットだけでなく、こうした多くの関係者の段取りとも結びついています。
延期のニュースの多くは、安全のための仕組みが働いた結果です。編集部の見方では、「また延期」と受け止めるよりも、どのルールが理由になったのかを見るほうが、そのミッションの状況がよく分かります。天気なら翌日にも再挑戦できることが多い一方、機体の部品の問題なら、Crew-13 のように数週間単位で日程が動くこともあります。
窓の長さも、延期の重みを左右します。ISS へ向かう打ち上げのように窓がほぼ一瞬なら、わずかな問題でもその日はスクラブになります。一方、NASA によると、惑星へ向かう打ち上げでは、地球と目的の惑星の位置関係から、打ち上げられる期間が数週間に限られます。この期間を逃すと、次の機会まで長く待たなければなりません。火星への旅については、別の記事で詳しく扱います。
Compared
「スクラブ」と「延期」と「ホールド」の違い。スクラブは、その日の打ち上げの試みを取りやめることです。延期は、打ち上げ日そのものを後ろにずらすことを広く指します。ホールドは、カウントダウンの時計を一時的に止めることで、計画どおりのホールドもあれば、確認のための臨時のホールドもあります。ホールドのあと時刻内に再開できれば、その日のうちに打ち上げられます。
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スクラブ
延期
ホールド
「発射場の天気」と「打ち上げの天気」の違い。予報で示される「好条件○%」は主に発射場付近の見込みですが、実際には上空の風や、飛行経路の下の海の天気も確かめています。Crew-10 のように、発射場付近の予報が95%以上でも見送られることがあります。
東向きと、それ以外の方向の打ち上げの違い。東向きは自転の勢いをもらえますが、北極や南極の上空を通る軌道へは、別の向きに打ち上げる必要があります。NASA によると、フロリダ東海岸からは傾きの小さい軌道に向いていて、傾きの大きい軌道にはカリフォルニア州のバンデンバーグから打ち上げます。軌道の種類と傾きについては、軌道の種類の記事で解説しています。
FAQ
見ているのは地上の空だけではないからです。上空の強い風の変化、飛行経路から離れた場所の雷雲、そして有人飛行なら、上昇経路の下の海の風や波も条件に入っています。2025年3月の Crew-10 は、発射場付近の予報が好条件95%以上でしたが、飛行経路の強い風と雨のために見送られました。
あります。2026年10月1日の Crew-13 は、発射場付近の予報が好条件40%でしたが、予定の時刻に打ち上げられました。予報は「その時刻にルールを満たせる見込み」であり、最終的には直前の実際の観測で判断します。
窓が「瞬間的」な場合は、その日の機会はなくなります。ただ、ISS へ向かう打ち上げでは、翌日以降にも機会があるのがふつうです。Crew-10 では、3月12日のスクラブのあと、次の機会として13日午後7時26分が示されました。
JAXA によると、種子島は日本の射場の中で赤道に近く、東向きに打ち上げると、秒速約400mの自転の速さをロケットの速さに加えられます。また、打ち上げ方向に定期的な航空路や航路がないこと、周りに民家がないことも理由に挙げられています。フロリダと同じく、東に海が広がる場所が選ばれているのです。
FAA · 政府・規制当局 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
FAA · 政府・規制当局 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
NASA Kennedy Space Center · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2026.10.01 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2026.10.01 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2026.10.01 · 参照 2026.10.02
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NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2025.03.12 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2025.03.12 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2025.03.14 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 2021.12.21 · 参照 2026.10.02
NASA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
JAXA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
JAXA · 宇宙機関 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
Spaceflight Now · 報道 · 2026.09.26 · 参照 2026.10.02
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イメージNASA は2026年8月29日、Dragon の推進系で酸化剤の漏れが見つかったため、Crew-13 の打ち上げ日を見直すと発表しました。新たな目標は10月1日以降です。
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