Falcon Heavy、NASA のローマン宇宙望遠鏡を打ち上げ
2026年8月30日、Falcon Heavy が NASA の Nancy Grace Roman 宇宙望遠鏡を打ち上げました。サイドブースター2本は発射場近くの着陸場に戻りました。
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イメージHall 00 · Space Basics
Orbit Types
衛星は仕事に合わせて回る高さを選んでおり、近い低軌道は通信の遅れが小さく、遠い静止軌道は空の同じ場所にとどまって見えますが、遠くへ行くほどロケットが運べる重さは小さくなります。
衛星は仕事に合わせて、地表に近い低軌道や、赤道上空 35,786km の静止軌道などを選んで回っています。遠い軌道や月・火星へ向かうほど必要な速さが増え、同じロケットでも運べる重さは大きく減ります。
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How it works
軌道の記事では、宇宙の「高さ」よりも「横向きの速さ」が大切だという話をしました。では、十分な速さを出して軌道に乗れたら、どこを回ってもよいのでしょうか。実は、衛星や宇宙船は、仕事の内容に合わせて回る高さと道すじ(軌道)を選んでいます。そして、選ぶ軌道によって、ロケットの苦労がまったく違ってきます。この記事では、地球に近いほうから順に、代表的な軌道を見ていきます。
いちばん身近なのが、低軌道(LEO:Low Earth Orbit)です。ESA(欧州宇宙機関)は、高度2,000kmより下を低軌道としています。ただし、空気がわずかに残っているため、衛星はふつう高度180kmより下は飛ばないとも説明しています。国際宇宙ステーション(ISS)は高度約415kmを回っていて、NASA によると1日に16回も地球を1周します。Starlink の衛星も低軌道の仲間で、SpaceX の技術資料によると、高度500〜600kmの範囲にいくつもの層(シェル)を作って並んでいます。
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低軌道の衛星は、とても速く動いています。ESA によると、その速さは秒速約7.8kmで、約90分で地球を1周します。ここで、意外な事実があります。NASA が説明しているように、軌道は高くなるほど、回る速さはゆっくりになるのです。地球の重力は遠くなるほど弱くなるので、落ちないために必要な横向きの速さも小さくて済むからです。
その性質をうまく使ったのが、静止軌道(GEO)です。ESA によると、赤道の真上、高度35,786kmを、西から東へ秒速約3kmで回ります。1周にかかる時間は23時間56分4秒で、これは地球が1回自転するのにかかる時間とぴったり同じです。衛星が地球の自転と同じペースで回るので、地上から見ると、いつも空の同じ場所に止まっているように見えます。「静止」と呼ばれるのはこのためです。
空の同じ場所にいてくれると、とても便利です。日本の気象衛星「ひまわり」は、気象庁によると東経約140.7度の赤道上空、約35,800kmにいて、地球の自転と同じ周期で回っています。いつも日本を含む同じ範囲を見下ろせるので、台風や前線の動きを途切れなく見守ることができます。衛星放送のアンテナが一度向きを合わせれば動かさなくてよいのも、相手の衛星が静止軌道にいるからです。
ただし、静止軌道はとても遠い場所です。NASA によると、地球の赤道の直径は12,756km、つまり半径は約6,378kmです。地球の中心から静止軌道までは42,164kmあり、これは地球の半径の約6.6倍にあたります(計算値)。上の図は、地球と低軌道、静止軌道の大きさを同じ縮尺で描いたものです。低軌道は地球の表面にほとんど貼りつくような細い輪で、静止軌道はそのはるか外側の大きな輪、破線の楕円は静止軌道へ乗り換えるためのトランスファー軌道です。
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そこまで行くために使われるのが、トランスファー軌道(移行軌道)という考え方です。ESA によると、衛星はいきなり最終的な軌道に置かれるとは限らず、いったん「乗り換え用」の軌道に入れられ、そこから自分のエンジンで目的の軌道へ移ります。静止軌道へ向かう場合は、地球に近いところから高度35,786kmまで伸びる、細長い楕円の軌道(静止トランスファー軌道、GTO)に入れられます。衛星は楕円のいちばん遠い点に来たとき自分のエンジンを噴射し、まん丸の静止軌道に移ります。ロケットが運ぶのは「乗り換え駅」まで、そこから先は衛星が自力で進む、と考えると分かりやすいでしょう。
地球を回る軌道の外には、月や火星があります。NASA によると、月までの平均距離は384,400kmで、静止軌道の高さのおよそ10倍です(計算値)。月や火星へ向かうには、地球の重力をほぼ振り切れるほどの速さが必要で、ふつうはいったん地球のまわりの軌道に上がってから、さらに加速して旅立ちます。火星は地球との位置関係によって行きやすい時期が限られるため、出発のタイミングも重要になります。
遠くへ行くほど必要な速さが増えるので、同じロケットでも運べる荷物はどんどん減っていきます。SpaceX の公表値では、Falcon 9 が運べる重さは低軌道へ22,800kg、静止トランスファー軌道へ8,300kg、火星へ4,020kgです。静止トランスファー軌道では低軌道の約36%、火星では約18%にまで減る計算です。より大きな Falcon Heavy でも、SpaceX の公表値で低軌道へ63.8トン、静止トランスファー軌道へ26.7トン、火星へ16.8トンと、同じように行き先が遠いほど小さくなります。増えた速さの分だけ燃料を燃やさなければならず、その燃料を運ぶためにもまた燃料が要るからです。
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Why it matters
どの軌道を選ぶかは、衛星の仕事の中身を大きく左右します。Starlink が低軌道を選んだいちばんの理由は、通信の遅れ(遅延)を小さくするためです。電波は光と同じ秒速約30万kmで進みます。静止軌道の衛星を使うと、地上から衛星まで、衛星から地上の基地局まで、それぞれ約3万6000kmを進むので、片道だけで約0.24秒、送ってから返事が届くまでには電波の移動だけで約0.48秒かかる計算です。Starlink の資料では、利用者から衛星を経て地上に戻るまでの1区間は1.8〜3.6ミリ秒、往復でもふつう10ミリ秒未満とされています。ビデオ通話やオンラインゲームのように、すぐに返事が欲しい使い方では、この差がはっきり表れます。
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その代わり、低軌道には苦労もあります。一つは、衛星の数がたくさん必要になることです。低い衛星は地上から見える範囲がせまく、秒速約7.8kmで空を横切ってすぐ見えなくなってしまいます。いつでもどこでも頭上に衛星がいるようにするには、大量の衛星を並べなければなりません。静止軌道なら1基でいつも同じ地域を見られるのとは、正反対の考え方です。
もう一つは、薄い空気によるブレーキです。NASA によると、ISS がいる高度でも大気がわずかに残っていて抵抗を受けるため、定期的にエンジンで高度を上げ直す必要があります。もし何もしなければ、太陽の活動の強さにもよりますが、およそ1〜2年で大気圏に落ちてくるとされています。ただし、この性質は良い面もあります。SpaceX の資料によると、Starlink 衛星はロケットからいったん低い軌道に放出され、そこから自分で軌道を上げていきます。理由の一つは、万一動かない衛星があっても、空気の抵抗が強い低い高さならすぐに落ちて燃え尽きるからだと説明されています。壊れた衛星がいつまでも宇宙に残りにくいのです。
編集部の見方では、軌道の種類を知ると、SpaceX の打ち上げのニュースが立体的に見えてきます。Starlink や ISS へ向かう Dragon は低軌道、通信や気象の大型衛星の多くは静止トランスファー軌道、探査機はさらにその先へ。同じ Falcon 9 の打ち上げでも、「どこへ運ぶのか」によって、運べる重さや難しさがまったく違うのです。
Compared
低軌道と静止軌道の違いは、「近くて速い」か「遠くてゆっくり」かです。低軌道は地上に近いので通信の遅れが小さく、地表を細かく観測できますが、衛星は空をすぐに通り過ぎてしまいます。静止軌道は遠くて遅れも大きいものの、1基で同じ地域をずっと見続けられます。
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低軌道
静止軌道
静止トランスファー軌道(GTO)と静止軌道(GEO)は、名前は似ていても別物です。GTO は静止軌道へ向かう途中の細長い楕円の軌道で、ロケットの仕事はふつうここまでです。ロケットの「GTO へ何kg」という数字は、静止軌道へ直接運べる重さではない点に注意が必要です。
低軌道の中にも種類があります。ESA によると、北極と南極の上空を通る極軌道は、多くが高度200〜1,000kmの低軌道です。その一種の太陽同期軌道では、毎日同じ地方時刻に同じ場所の上空を通るため、地表の写真を同じ日当たりの条件で比べやすくなります。
FAQ
いいえ。ESA によると、静止軌道の衛星は秒速約3kmで動いています。地球の自転と同じ時間で1周するので、地上から見ると止まっているように見えるだけです。電車と並んで同じ速さで走る車が、電車の窓からは止まって見えるのと似ています。
できません。静止軌道は赤道の真上にしか作れないからです。そのため「ひまわり」も、日本の真上ではなく、東経約140.7度の赤道上空にいます。日本から見ると、静止衛星はいつも南の空にあります。
地球の重力は、遠くへ行くほど弱くなります。重力が弱ければ、落ちないために必要な横向きの速さも小さくて済みます。ESA によると、低軌道は秒速約7.8km、静止軌道は秒速約3kmです。ただし、高い軌道へ上がるまでにはたくさんのエネルギーが必要なので、ロケットにとっては遠い軌道のほうが大変です。
低軌道にはわずかに空気が残っているため、衛星は少しずつ高度を下げます。Starlink 衛星は自分のエンジンで高度を保ち、役目を終えると軌道を下げて大気圏で燃え尽きるように運用されています。詳しくは Starlink 衛星の記事で解説しています。
SpaceX · 公式 · 一次情報 · 参照 2026.10.02
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